2013年1月3日木曜日

劇場のネットワークインフラ設計思想

 これからの10年、舞台照明に、映像要素がより深く関わる事は、誰の目からもあきらかで、それはこれまで存在したスライドプロジェクションの演出が、デジタルプロジェクターに置き換わる事象としてみれば、自然な成り行きとも言えるでしょう。

この映像演出の高まりによって、劇場では映像伝送のためのインフラ設備も同時に必要となる事を意味し、さらにそのインフラは映像を伝送する以外に、機器の制御も考慮したものが必要となり、その点では、今の照明ネットワークインフラが重要な役割を担うと考えられます。

 劇場に求められる映像向けインフラ


私は、劇場のネットワークインフラについて、以前から光ファイバーをバックボーンにしたリングトポロジーによるネットワークシステムを提案しています。この方式は、照明の制御信号のためのリダンダントシステムという意味だけでなく、マルチコアで敷設した光ファイバーを映像にも活用できる点と、ケーブル長をできるだけ抑える事による経済的な面でも、この方式がいかに合理的判断かを顕著に示すこれら利点があるからです。

劇場のネットワーク設計について(詳細)


現代の劇場のネットワーク設計において、重要な事は、新しい演出への柔軟な対応を考慮することで、それは照明だけでない、演出のためのインフラ設備を意識する必要があると思います。(照明のネットワーク化がはじまった10年前とは、もう違うのです)

そこで、2013年以降、劇場の ”演出のために施工するインフラ設備” は、以下の要点を加味して設計すべきではないか というこのブログからの提案を記してみたいと思います。

  • マルチプロトコルの許容(VLAN可能なスイッチ選択)
  • リダンダントな設計思想(経路の2重化は必須)
  • 光のマルチコアによるバックボーン回線の敷設
  • 光ファイバーの拠点は、映像を取り出せる意味で投光可能なポイントを選択
  • 光の端末位置は、上手下手など片側に偏らず劇場全体で見て均一な配置にする

今後、照明のネットワークは、さまざまなプロトコルが同居する世界となります。と同時に、そこには照明以外の映像機器の制御プロトコルやファイル伝送のインフラとしても活用する可能性は十分にあります。

ネットワークが劇場の全体に敷設される可能性は音響よりも照明のほうがはるかに可能性が高く、 劇場のあちこちにネットワークポートがあることで、そこにファイルトランスファーの活用を期待する事も自然です。またインカム回線として使用することも可能で、さらには、タイムコードやキューコールのシステムを混在させる事も可能であり、正しい知識があれば、それらが同一ネットワーク上に共存することがいかに簡単かを理解できるはずです。

こうした多目的に活用が期待される照明のネットワークには、今後グルーピング可能なスイッチ選択が必要になるほか、バックボーンは光ファイバーにして1ギガ帯域は確保すべきでしょう。また、経路の二重化は、照明だけでなくインカム回線や映像機器の制御など重要なインフラになるものですから、冗長化は必須であると思います。そして、光の端末は映像伝送を意識すると、シーリングやフロントや奥舞台などのプロジェクション位置に設定することで、非常に有効活用できるのではないでしょうか?

以上のような点を考慮すると、照明のネットワークインフラ設計は、劇場で行う演出のために存在するインフラであり、今後、さらに重要度が増すと考えられます。