2012年7月18日水曜日

劇場に求められる映像向けインフラ

2000年代半ばから進む映像コンテンツの舞台演出への応用は、スライドプロジェクションのような静止画ではなく、高輝度なプロジェクターを使った動画コンテンツによる演出であり、以前よりも映像分野の専門知識をもつセクションの存在価値が高まりつつある。 そしてまたこの映像演出は、現代の舞台演出にとって、なくてはならないものになりつつある。

しかし映像を使う演出手法自体は、劇場空間において、決して新しいものではなく、動画とは言え、演出用途としては、やはりスライド演出のその延長線上にあって、それは照明効果としての映像であると言える。例えば、2011年にアメリカで行われた次のような演出も、照明効果としてプロジェクションを活用した例で、

 http://livedesignonline.com/news/2100_oscar_projections_030311/

その意味では、プロジェクションマッピングと、もてはやされている映像演出も、舞台では舞台美術への照明効果を映像で代価する手法として、パニープロジェクションやPIGIを利用した演出と大きな違いはなく、手法そのものよりも、技術的な進化が注目されるところだろう。

 さて、こうした映像演出が一般化する昨今の舞台演出において、それを受け入れる劇場においては、より自由に映像をディストリビューションできるインフラが必要になることは間違いない。そしてそのインフラとしてもっとも将来性のあるものが、光ファイバーとなる。

 照明のネットワーク化が進む、最近の劇場照明システムの考え方は、信号の劣化が少ない光ファイバーで、長距離を延長し、できるだけ照明機材の設置される各ポイントに近い位置まで、幹線を敷設することが合理的である。そして接続ポイントとなる光ポートをもつネットワークスイッチの数が多ければ、それだけカッパーケーブルによる延長は短くなるうえ、カバーできる範囲も広くなる。(カッパーケーブルによる延長では100mという限界があるため)

その意味では、照明機材を仕込むポイントに、拠点となるスイッチが配置される事が望ましい。それは例えば、シーリング、フロント、ギャラリー、ポータル、奥舞台、すのこ、上下の袖などになるだろう。しかしこれは照明だけでなく、映像にとっても最重要なポイントになる可能性が高い。なぜなら将来のプロジェクションライティングを考えると、同じ位置からプロジェクターを照射する可能性が高いからだ。

こうした事から照明のネットワークインフラにおける光ファイバーは、映像を考慮して、マルチコアで配線し、スイッチの拠点各所に、終端処理をして立ち上げておく事で、いつでも、どこからも映像送出が可能となり、将来的には映像機材を増設する際にも使いやすいものに変るだろう。

これは舞台のビジュアルデザインという側面で、映像部門を捉えた時、未だ劇場では確立されていない映像セクションが、照明セクションと強く結びつくことを意味している。つまり、照明のインフラを構築するとき、そこに映像のことを考慮するのは、照明によって意味があるということである。

ただしかし、ここで話す映像は、あくまで演出として映像を活用する事を考慮した場合の話であり、単純に映画やセミナーのコンテンツをスクリーンに照射するような映像の使い方しかしないのならば、必要のない設備だろう。あくまで、演出として映像をフルに活用する可能性をもった劇場の話である。





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